パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 とはいえ、途中で何度も挫折しかけた。

 「もう無理……」と泣きついて、ルイの胸に抱かれて過ごした夜もあった。

 ルイはわたしの髪をやさしく撫でながら、繰り返し囁いた。
「大丈夫だ。薫ならぜったい乗り越えられる」と。
 その声に、また泣かされてしまったり……

 とにかく、思いえがく香りがなかなか得られず、苦しみぬいた。

 でも、この約60日間。
 ただ好きな香りと濃密に対峙するだけの、得がたい時間であったことは確か。

 なんて、すごい経験をさせてもらっているんだろう。

 最後には、無名のわたしに任せてくれた、ジャンのありえない決断にまで、深く感謝するようになった。

 こうして、多くの助力のおかげで……
 わたしは無事、納期までに3種類の香水を完成させることができた。
< 231 / 245 >

この作品をシェア

pagetop