パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
***

「イルミネーション、綺麗だね」
「寒くないか?」
「平気。ちょっと酔っぱらってるからこのぐらい寒いのがちょうどいい」

 ルイは広場を見渡して、言った。
「20世紀のはじめ、ここに香水王コティとガラス・アーティストのルネ・ラリックの店があったのは知ってる?」

「うん、もちろん。日本にいるときから本で読んで知ってた。学校の香水の歴史の授業でも聞いたけど」

「ラリックの革新的な香水瓶が、香水の歴史を変えた場所だ」
「それでここに連れてきてくれたの?」

 ルイはふっと微笑んだだけで、なにも言わない。

 そのまま、広場の中央の大きなツリーの前まで歩いていった。
 立ち止まると、ルイはコートのポケットに入れて、絡め合っていたわたしの手をほどいた。

 そして……
 わたしの正面に立ち、ゆっくり片膝をついた。
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