パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 それから、内ポケットに入れていた小さな箱を手のひらの上にのせ、蓋を開き、わたしの前に差しだした。

 ケースに収められていたのは、贅を尽くしたエンゲージリング。
 大粒のダイヤが煌めき、メレダイヤがその周囲を飾る豪華なリングだった。
 
「まだきちんとプロポーズしていなかっただろう? 今日、宝飾店から届いた」

 ルイはすっと背筋を伸ばして、わたしを見上げ、言った。

「薫、どうか私と結婚してほしい」

 なぜか、プロポーズのことはまったく念頭になかった。

(ああ、わたし、本当にルイと結婚するんだ)

 そんな間が抜けた考えが頭をよぎり、それからじわじわと嬉しさがこみあげてきた。

「はい……よろしくお願いします」
 そう返事をすると、これまでで一番嬉しそうな笑顔になった。
 そして、わたしの左手を取り、指輪を薬指に嵌め、手の甲に口づけた。

 そのまま、立ち上がった彼に抱きしめられた。

 ルイの温もり。
 いつものコロン。
 この上なく、わたしを安心させてくれる香り。
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