パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「ルイの香り、好き。嗅ぐと安心する」
「そういえば、これがどこのものか突き止めたのか?」
「ううん」

 わたしはルイを見上げて言った。
「メンズのあらゆる香りを嗅いで探したけど、なかった。もしかしてオリジナル?」

「ではないが、メジャーなものではない。オルレアンの修道院で中世のころから作られているものだよ」
「ああ、だから……」

「これからは私専用のものを薫に作ってもらうか」
「うーん、わたしはずっとその香りのほうがいいな」

 だって、わたしたちを結びつけてくれた香りだから。

「じゃあ、そうしよう。私の愛しい姫の仰せのままに」

 もし、あのとき。
 ルイが、ブルガリとかCKとかの、有名な男性用コロンをつけてたら、初対面の彼の匂いを嗅いだりしなかった。

 そうしたら、きっと……
 わたしは今、ここにいなかった。
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