パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 実は当初、「結婚式はヴェルサイユ宮殿を会場にしよう」という案もでていた。
 でも、使用料を聞いたら、目玉が飛び出るような金額で、それはやめようとルイに頼んだ。
 
 ベルナルド家に使いきれない財産があるのはわかってる。
 でも、だからと言って無駄遣いしていいってわけじゃない。

「そのお金、もっと人の役に立つように使ったほうがいいよ。慈善事業とか」

 わたしの言葉に、ルイは満足そうに微笑んだ。
「さすがだな。どんなときも思いやりの気持ちを忘れない。それでこそ私の愛する薫だ」

 そのとき、わたしたちはカフェにいて、ちょうどギャルソンが注文した品を運んできてくれたところだった。

 それなのに、ルイはかまわず、わたしの肩に腕を回して抱き寄せると、素早く口づけた。

「私も、薫のその優しさに参ってしまったひとりだよ」などと囁きながら。


 調香師の仕事はもちろん続けている。
 ただ、『アンジュ・ルグラン』と専属契約は結んだけれど、同時にマダム・デュボアに弟子入りもした。

〝雪月花〟は、話題性だけでなく、期待以上の評価をいただいた。
 でも、まだ独り立ちするまでの力がないことはわたしが一番よく知っている。

 これからしばらく、マダムの元でしっかり鍛えてもらおうと、思いを新たにしているところだった。
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