パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 そんなわたしの態度に、彼はますます目を輝かせた。
 振り向くと自分の顎を撫でながら、笑みを浮かべている。

 そして、なんだか聞き捨てならないことをのたまった。

「ますます面白くなってきた。そこまできっぱり拒絶されると、私としては逆に征服欲をそそられるんだが」

 そ、そんなぁー。
 気づくと、彼は真後ろに立っていた。
 そして覆いかぶさるように、わたしの両脇の欄干を掴んだ。

 ……わ、ち、ちょっと!

 ホテルの着つけ係の人が、持てる技すべてを駆使して豪勢なお太鼓を結んでくれたおかげで、なんとか密着は免れている。

 でも、彼の顔はほぼ真横。
 ち、近すぎる。
 コロンがまた強く香ってくる。
 太鼓のバチで連打されてるみたいに心臓がバクバクしてる。
 卒倒しちゃうって、そんなことされたら。
< 26 / 245 >

この作品をシェア

pagetop