パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「す、すみません」
「いや、こちらこそ。お怪我はありませんでしたか」
 
 わっ、イケボ!
 それも色気だだ漏れ系の渋い低音。

 それに……
 このコロンの香り。
 なんだろう。
 嗅いだことない……

 香水フリークのわたしは、知らず知らずのうちに、その男性の上着を手に取って嗅いでいた。
 まだ青いレモンと……なに、これ。
 とてもさわやかな香りが混じってるな。
 グリーンティも香ってるし。

 有名なメンズ・フレグランスなら、だいたいどれでも嗅ぎ分けられるけど。

「これ、どこのメーカーの?」
「……あのさ」
 その人は、自分に抱きついたまま、鼻をクンクンさせているわたしに不審げに声をかけてきた。
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