パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 そう言って彼は眉間に皺を寄せた。
 すかさず、わたしは彼の真似をして自分の眉間を指し「シワできてますよ」と言った。
 彼はわたしの顔を見て、表情をゆるめた。

「ただ祖母は心臓を悪くしていてね。医者が言うには先はそう長くない。それまで、なんとか誤魔化して結婚しなければいい」

 ……それって、お祖母さんが亡くなるのを待つってこと?
 それはそれで、どうかと思うけど。

「薫はパリに留学したいんだろう? その話を聞いたからこそ、こんな提案をしているんだ」
 彼はさらにたたみかける。

「失礼だが、留学費用はどうするんだ? 負債を抱えたきみのご両親を頼るわけには行かないだろう。きみの家の借金も学校の費用も滞在費も私が持つ。どうだ? 薫にとって、決して悪い話ではないと思うが」
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