パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「パリ行き、お世話になることに決めました。どうぞよろしくお願いします」
「決心してくれたんだな。嬉しいよ」
「ありがとうございます」
 向こうに見えないことは知りつつ、わたしは深々と頭を下げて電話を切った。

 返事をしてしまった。
 もう後戻りはできない。
 とにかく、努力あるのみ。

 わたしは本棚から、何度も読みかえして、ぼろぼろになったパリのガイドブックを取りだした。
 ようやく、本場で香水の勉強ができるという、本来のわくわくする気持ちがよみがえってきた。
 
 彼の言う、婚約者の〝フリ〟がうまくできるかどうか、若干不安は残るけど。

 まあ、なんとかなるでしょ。
< 47 / 245 >

この作品をシェア

pagetop