パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
ルイ・サイド
――薫、パリに来てくれないか。
なんであんなことを言ってしまったのか。
いまだに自分でも不思議だ。
曽祖父が決めた許嫁が日本にいる。
そんな突拍子もない話を、祖母から聞かされたのは今から10年前だった。
それでようやく長年の謎が解けた。
幼少のみぎりから、一族のなかでなぜ私だけ、日本語を習わされてきたのか。
フランスからはるか1万キロも離れた異国の、暗号よりも難解な言葉をどうして習得しなければならないのか、ずっと疑問だった。