パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 もちろん、話を聞いたときには抵抗した。

 そんな、遠い異国の、見も知らぬ相手と結婚するのは嫌だと。
 百年も前の口約束を、なぜ自分が守らなければならないのかと。

 それに縁談など考えられない心境にあった。
 ……後悔と自責の念にかられていたから。


 だが、わが家では、祖母の意向は絶対なのだ。

 相手が日本人だからこそ、どうしてもこの結婚を成立させなければならないのだと。
 それが、自分の父母、あなたの曽祖父の立っての望みだったのだから、と。

 10年間、事あるごとに説得しても祖母の気持ちを変えることはできなかった。

 第一、わたしが祖母に敵うはずはなかった。

 会社では絶対君主然として、望みのままに権力をふるっている父ですら、祖母に頭が上がらないのだから。
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