パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 公家の血筋である父方の祖母は、室町時代から代々受け継がれてきた香道のお家元の出身。
 久世家に嫁入りした者はかならず、師範である祖母の元で、香道を(たし)まなければならなかった。

 で、ママにはそのことがとてつもない苦痛だった。
 でも姑には逆らえない。
 そこで、お稽古のときはかならず、わたしを連れていくことを思いついた。
 何故かと言えば……
 幼いわたしがぐずりだすと、お稽古の途中で席を外すことができるから。

 大人のママも毛嫌いするのに、子供のわたしが香道を好きになるはずがない。
 6歳になるとわたしもお稽古をしなければならなくなった。
 そして、手のひらを返したように祖母も厳しくなった。

 それに、小さいときから、鼻の健康を保つために外出後はかならず鼻うがいをさせられたり、大嫌いな耳鼻科にも月2回通わされ……と、もう香道に関しては嫌なことばかり。 
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