パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「それで、ちょうどそのころ、香水に出会ったんです」

 年上のいとこの部屋に遊びに行ったときだった。
 淡いピンク色をしたガラス瓶に、一目で惹きつけられた。
 キラキラ輝くラインストーンで飾られたそれは、おとぎ話のお姫様の宝物のように見えた。

「これなに?」
「香水だよ」と言って、いとこはわたしの手首に少しだけつけてくれた。

「うわー、いい匂い!」
 香りを嗅いだだけで、こんなに晴れやかな気持ちになれるなんて!
 同じ香りに親しむものでも、香道とはぜんぜん違う!

 その日をきっかけに、わたしは香水にドはまりした。

 図書館で香水に関する本を借りてきて、辞書を引きながら熟読したり。
 お小遣いをもらうたび、ミニチュアの香水を買い集めたり。
 中学生になったころには、いっぱしの香水通になっていた。
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