パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 そうこうするうち、パリの中心部の、ある建物の前でリムジンは音もなく停車した。

「さて、着いたぞ」
「えっ、ここ? なんで?」

 着いたところは、アーチが整然と並び、白い日よけが印象的なホテルの車寄せ。
 ここって……
 『オテル・リッツ』じゃない!?
 言わずと知れた、長い歴史を誇る、パリ最高級ホテルのうちのひとつの。

「ボンソワール、マドモアゼル」
 紺色の制服のベルボーイが車のドアを開けてくれた。
 
「えっ、てっきりアパルトマンに行くもんだと思ってたから」
「ああ、前に私が住んでいたところに入る予定なんだが、水回りのリフォームが間に合わなくてね。とりあえずの住まいはここ」
「とりあえずって……」
 わたしは絶句した。

「ここは中心部だから仕事に行くにも便利なんだよ。ああ、心配しなくてもちゃんと別室を取ってある」
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