パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 するとすぐに、コンコンとドアがノックされる。
 廊下に通じるドアではない。
 室内にあるドアだ。

 鍵を外して開けると、ベルナルドさんが立っていた。
 顔には笑みが浮かんでる。

「ここから出入りできるんだな」
「知らなかったんですか?」
「ああ、ホテルには私と婚約者の部屋を二つ取ってほしいと伝えただけだ」

 うーん、それって、ちょっと怪しくないか……?

 疑いの気持ちが、そのまま顔に出ていたんだろう。
 ベルナルドさんはわたしの顔を覗きこんで、日本語で言った。

「夜這いをかけるとでも疑ってるのか?」
「夜這い……よく知ってますね。そんな言葉」

 彼は右手を上げると、デコピンしてきた。
「痛ぁっい」
「安心しろ。言っただろ? 子供(ガキ)に手を出す趣味はないって」

 彼は部屋を横切り、窓際に置かれたソファーに座り、右脚を高く上げてから、長い脚を組んだ。
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