パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
***

 ほんとに最悪。
 ぜったい厄日だ。今日は。

 と、不貞腐れているわたしは久世薫、二十歳。
 短大のライフデザイン科2年生。

 家は戦前から続く、呉服を扱う老舗織物問屋。
 父方の祖母は華族の血を引く名門家系。
 まあ、一応、〝お嬢様〟ってことになるのかな、世間的には。

「薫、むくれてないで、ちゃんとご挨拶なさい」
 ママがわたしをたしなめる。
 
 知らないよ!

「いや、ひとり娘なもので、ついつい甘やかしまして」

 パパが頭を掻きながら、そんなことを言ってる。

 その男は何も言わず、ただ唇の端に微笑を浮かべているだけ。

 うわっ、やな感じ。
 ぜったい性格悪いよ、この男。
 あーあ、もったいないなぁ。
 思わず拝みたくなるような、極上のルックスなのに。
 
< 8 / 245 >

この作品をシェア

pagetop