パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 そうだ。
 「フリ」はふたりしか知らない話。
 わたしは彼の「婚約者」なのだ。
 だからホテルのスタッフもあれほど丁重に扱ってくれるのか。

「はい。では……ルイ」
「よし。それでいい」

 彼はわたしの頭を撫でてくる。
 飼い犬をかまうような仕草で。
 見上げると、危うさなんて微塵もない、ただ優しいだけの視線。

 曲がりなりにも、ホテルの部屋でふたりっきりなのに。 
 彼にとってのわたしは、ガキ以外の何者でもない。
 言葉や態度で、そのことをイヤというほど教えてくれる。

 うん。よーくわかってますって。そんなこと。
 でも、ちょっとだけ、胸の辺りがモヤモヤするのはなんでだろう?
 
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