パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 ひとの気も知らずに、ルイはテーブルの上のカップ麺のフタを上げて、匂いを嗅ぐ。
「うーん。食欲をそそる匂いだ。さ、食べよう。麺が伸びるぞ」
「はーい。 いただきます」

 リッツに似合おうが似合うまいが、カップ麺はとっても美味しかった。
 食べ終わってから少しして、ルイは立ち上がった。

「では、また明日。朝食は一緒に取ろう」
「はい。ではおやすみなさい」

 ドアに手をかけてから、彼は首だけこっちに向けた。
「ちゃんと内鍵かけておけよ。何かの拍子に〝魔がさす〟かも知れないからな」

 そう言ってウインクすると、大声を立てて笑いながらドアを閉めた。

 わたしはわざとらしく、大きな音を立てて鍵をかけてやった。

 魔がさす、とか。
 
 そんなこと、これっぽっちも思ってないくせに。
 ただのガキだとしか、思ってないくせに。

 なんだか、ちょっと腹が立った。
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