パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます

4・引っ越しと挨拶

 薬が効いたのか、翌々日にはもうすっかり熱は下がった。
 喉の痛みもだいぶ引いた。

「いろいろありがとうございました」

 朝食のとき、そう言って挨拶すると、彼は「よかったな」と一言。

「でも、熱が下がったからって油断して急に動くなよ。今日はホテルで過ごせ」
「うー、じっとしてるのは苦手なんですが、さすがに今日はおとなしくしておきます」
「そうしろよ。なるべく早く帰ってきてやるから」

 そう言うと、ルイはわたしの頭に手を置き、目線を合わせてくる。
 だから……そんなことしないでってば。
 また芽が生えちゃうから。

 もう、どうして、そう、人を困らせるようなことを言ったりやったりするんだろう、この人。

 わたしは彼の婚約者じゃない。
 フリだけ、フリだけ。
 彼の後ろ姿を見送りながら、心のなかでお経のようにそう唱え続けていた。
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