国宝級美男子のお世話は甘い危険がいっぱい〜私の心臓いくつあっても足りませんっ〜
「翔ちゃん、ご……ありがとう」


 ごめんね、と言いそうになったけれど、ありがとう、そう思った気持ちのほうが大きかった。


「羽花からありがとうなんて言葉久しぶりに聞けたな。今までは殆どが謝ってばっかりだったから、やっぱりありがとうって言葉は嬉しいもんだな。でもな、もう今まで通りには出来ない」


 バッサリと切り捨てられたような言葉が胸に突き刺さった。

「えっと……」


「俺の我儘でごめんな、でもそうしないと俺の長年の初恋はどうしても気持が断ち切れそうにないから」


 自分が泣くのは違うと思っていたのにぶわりと溢れ出す涙が止まらない。

「その涙を拭いてやりたいけど、それはもう俺の役目じゃないからな……」


 だんだんとちいさくなる声は少し震えていたような気がするが自分の嗚咽でうまく聞き取れない。


「っつ……翔ちゃん……ご、ごめ、ごめんなさっ……」


「羽花」


 慣れ浸しんだ声で名前を呼ばれるが頷くことが精一杯だ。翔ちゃんはまるで小学生のころの私を慰めるかのように優しく頭を撫で続ける。


「やっと、やっと羽花の閉じていた世界が急に明るく広がったんだ。羽花はすごく強くなったよ。強くなるために手助けしてくれたのはアイツかもしれないけど、勇気をだして行動したのは紛れもなく羽花の力だ。羽花は本当は明るくて活発な女の子なのを俺は知ってる。だからもう大丈夫、幸せになれよ、約束だ」

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