国宝級美男子のお世話は甘い危険がいっぱい〜私の心臓いくつあっても足りませんっ〜
 ふらついている身体を雷斗くんがしっかりと抱き寄せてくれているから立っていられているようなもんだ。


 私を支えてくれている雷斗くんの手が震えている。


「親父」


 今まで聞いたことないドスンと低い声。怒っている事がすぐに分かる。


「そんな意味分かんねぇ話聞いたこともないし、そんなこと俺が認める訳ないだろ。っ知らねえ女となんか結婚しねぇし、俺はもうずっと羽花と一緒にいるって決めてんだ。俺の隣は羽花しか立たせねぇから」


 力強い言葉に身体の奥底から涙が溢れ出てくる。けれど今泣いたら本当にただの震えている弱い小娘になってしまう。グッと堪えて、湧き上がる涙をせき止めた。


(私も、私も何か言わなくちゃ……)


 闇から這い上がりなにか言わなくちゃ。雷斗くんにばかり頼っては駄目だ。何か、何か言わなくちゃ……


「あ、あのっ――」


「はははっ、高校生の分際で何を言ってるんだ。随分と笑わせてくれるな雷斗。とにかくお前の結婚は決定事項だからな」


「私、雷斗くんとは別れません!!!」


 大きな声。考えるよりも先に身体が、口が勝手に動いていた。

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