国宝級美男子のお世話は甘い危険がいっぱい〜私の心臓いくつあっても足りませんっ〜

　疲れと寝不足からか段々と自転車を漕ぐ足が重くなってくる。一漕ぎ一漕ぎが重くて辛い。


　曲がり角を曲がるとガタンっと自転車が揺れ、転びそうになった。プシューっと空気が抜けるような音。


「えぇ〜もしかしてパンクしちゃったかな！？」


　自転車を降りスマートフォンのライトをつけてタイヤを照らすと明らかに前輪のタイヤがぺっちゃんこに凹んでいた。石でも踏んでしまったのだろうか。


「ど、どうしよ、直せるかな？」


　とは言えパンクなんて直した事がないしジーッとしゃがみこんで見ていても解決策が思いつかない。


「うん、駄目だ。押して帰るしかないや」


　立ち上がり自転車を押して帰ろうとハンドルを握った瞬間、カッと目に刺さるような激しい光が入り込んできた。


（え……）


　ズガガガーッと盛大な破壊音が夜の空に響く。


「あっ、あっ、あっ……」


　私の目の前を思いっきりカーブしたバイクは転倒し、道に横たわっている。


（どどどどどうしようっ……バババイク……ひとっ、人は大丈夫？！）


　私は慌てて倒れているバイクの元に駆け寄り「大丈夫ですかっ！？」と大きな声で話しかけるが返答がない。


（し、死んじゃったの……？）


　予期せぬ出来事にブワリと涙が止めどなく溢れ出てくる。


「し、死なないでくださいぃぃ」