国宝級美男子のお世話は甘い危険がいっぱい〜私の心臓いくつあっても足りませんっ〜
ヘルメットの隙間から見える顔は男の人。目を閉じている。まさか、いや、大丈夫だよね、生きてますよね?
「うぅっ……ごめんなさいっ、ひっく……ま、まずはきゅ、救急車……」
怖くて手がブルブルと震える。スマートフォンが上手くバックの中から取り出せない。
(早く、早く電話しなくちゃいけないのに……)
私の震える手がそっと温かく大きな手のひらに包み込まれた。
(え……?)
「ってぇ……大丈夫だから泣くな。救急車も電話しなくていいから」
「え……い、生きてたんですねぇぇ、うぅっ、よ、よかったですぅ」
この人が生きていたことにホッとしたのか更に涙がブワーッと溢れ流れて止まらない。
「っつ、派手に転んじまったな。でも生きてるから、勝手に俺を殺して泣くんじゃねぇよ」
痛え、とゆっくり身体を起き上がらせた彼はヘルメットをとり素顔を見せた。
暗い夜道でもよく分かるほどの綺麗な黒髪、吸い込まれそうな漆黒の瞳には泣きじゃくっている私が映し出されている。
(こ、こんなにも国宝級の美男子様に怪我をさせてしまったなんて……)
謝っても謝っても足りないに決まってる。