国宝級美男子のお世話は甘い危険がいっぱい〜私の心臓いくつあっても足りませんっ〜
(翔ちゃんだ、学校で電話だなんて珍しい)


「もしもし?」


 人に聞かれないように小声で電話に出る。


「羽花、朝の騒ぎはなんなわけ? とにかく今すぐ人に見られないように屋上の階段までこい」


「えっ、ちょっと……」


 ……切れちゃった。なんだか声が怒っていたように聞こえた。翔ちゃんが怒るなんて滅多にない事だ。とにかく言って話をしないと。


 気配を消すように人目をさけてあるいて無事屋上へ向かう階段までたどり着いた。


「羽花、こっちこい」


 小さな翔ちゃんの声。上を見上げると早く早くと手招きしている。


「翔ちゃん、あのね」



 サッカー部エースの翔ちゃんは短く整えられた髪にキリッと男らしい眉とくっきりと深い奥二重。その力強い瞳が私をジッと捉えて心配の眼差しを向けてくる。


「羽花、いつのまにあの生徒会長と付き合ってんだ? 俺なんにも聞いてないし、大丈夫なのか、あんなに目立って。お前、人に見られるの苦手だろう」


 食い入るように聞いてくる。翔ちゃんは私のゆいいつの友人、幼馴染だ。幼馴染と言ってもけして皆の前では話さない。学校でも赤の他人のように過ごしている。


 理由はただ私が弱虫なだけだ。

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