おとぎの檻



背にはやわらかい感触。
ベッドか布団にでも寝ているのか。


どこか鉄っぽいにおいが鼻をついた。



脳の奥底。記憶を辿ろうとしても、あるのは真っ暗な闇だけで。



自分が何者なのかも分からなかった。




「あなたは…誰ですか」



ふいに訊く。
うまく舌がまわらない。


そんなわたしをクスリと笑った気配がして。


また唇を塞がれる。



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