おとぎの檻
「僕が何者か、気になります?」
わたしは黙ってうなずいた。
すると男はそうですか、と答え
「では今からこの手を離します。その間きみは絶対に目を開けてはいけません。約束です。破ってしまった場合、貴女の美しい眼球を抉りとって僕が食べてしまいましょう」
どこか愉快そうに言った。
不思議と恐怖は感じない。
わたしはおかしいのだろうか。
むしろ…優しさというものを覚えるなんて。
「いいですね…朝佳(あさか)さん。
分かったのなら返事を」
「…はい」
「ふふ、いいこです」
パッと目もとの温もりが消えた。
どうしてわたしの名前を知っているの?
なんて疑問は、もう野暮だ。