おとぎの檻



「朝佳さん、右手を出して」

「え…」


「手の甲を伸ばすように。
そう。そのままでいてください」



言われたとおりにすれば、すっと下からその手をすくわれて、甲にやわらかいものが押し当てられる。


おそらくは…唇。



「ねぇ朝佳さん。取引しましょう。貴女に僕の素性を教える代わりに、僕の欲しい言葉をください」


「欲しい…言葉」


「はい。今から言う言葉を復唱するのです。拒むのなら貴女の手に消えない刻印をします。僕のものという刻印をね」



右手の甲にまたキスをされた。

離れる際に舌でなぜられて、背がぞくりとする。



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