初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
オーストリアから帰国してから、初めて会った思い出の場所である銀座の街を、彼と手を繋いで歩く。
先週は母親とドレスショップに行ったため、彼と顔を合わすのは二週間振り。久しぶりに会えた喜びで足取りも自然と軽くなる。
「どんなドレスをオーダーしたんだ?」
「それは、当日のお楽しみ」
デザイナーに希望を伝えて描いてもらったドレスのデザイン画は、スマホに保存してある。けれど、この際だから彼には結婚式の当日まで秘密にすると決めた。
直君がどんな反応をするのか、今から楽しみだ。
「そんなふうに言われると余計気になるな」
「それでも内緒」
唇の端から小さな笑い声を漏らして歩を進めていると、ほどなくして目的地に到着した。
銀座に本店をかまえる有名ジュエリーショップに足を踏み入れ、三階のブライダルサロンに向かう。
白を基調とした店内に並ぶショーケースの中で、シャンデリアの光を受けたジュエリーがまぶしく輝く。
「素敵」
煌びやかな光景を目のあたりにして感嘆の声を漏らすと、彼がエンゲージリングのコーナーへ向かう。
今日は『一緒に結婚指輪を見に行こう』と誘われた。
「直君、そっちじゃないよ」
声をかけて引き留めると、彼が足を止めた。