初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「結婚指輪の前に婚約指輪が必要だろ?」
結婚式までの期間が短いため、結納はしないとふたりで決めた。だから、婚約指輪も当然ないものと思っていた。
「いいの?」
思いがけないサプライズをうれしく思いながら遠慮がちに尋ねると、彼が笑みをこぼした。
「あたり前だろ。一生に一度のことだ。小夜子ちゃんに似合う指輪を一緒に選ぼう」
「ありがとう」
粋な計らいに胸を熱くしてエンゲージリングのコーナーに向かう。
「やっぱり、誕生石でもあるダイヤモンドがいいよな?」
「うん」
私の誕生日を忘れずにいてくれた喜びを噛みしめ、ショーケースの中を覗く。
透き通った光を放つダイヤモンドをあしらったエンゲージリングは、どれも素敵で目移りしてしまう。
「ひとつに決めるのって、難しいかも」
贅沢な悩みをポツリと漏らすと、彼が朗らかな笑い声をあげる。
「時間はたっぷりある。焦らなくていいから」
「うん」
アドバイスを心強く思い、時間をかけて店内を見て回る。そして、婚約指輪は大粒のダイヤがあしらわれたソリティアリングを、結婚指輪は飽きがこないストレートデザインのプラチナリングをふたりで選んだ。
サイズ調節とイニシャルを刻印するため、引き渡しはお盆休みが明けた八月の後半になるという説明を受けてジュエリーショップを後にした。