初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
私のお腹に意味ありげな視線を向ける真紀に全力で否定する。けれど、彼女は私がポロリと漏らした言葉を聞き逃さなかった。
「えっ? なにもないって嘘でしょ? ねえ、その話詳しく聞かせて」
「詳しくもなにも……。そういうことだから」
真紀とふたりきりならともかく、陽太がいる前でその手の話をするのはさすがに恥ずかしい。
言葉を濁して生ビールをグビグビ飲み、お代わりを頼んだ。
直君と映画を観に行って雨に降られたあの日から、彼のマンションには一度も訪れていない。
ふたりで会ってもレストランで食事をしながら結婚式の話をすることが多く、なかなか甘いムードにならないのだ。
「私って女としての魅力がないのかな」
結婚準備は順調でもプラトニックな関係に悩んでいたのは事実。
すぐに運ばれて来た生ビールに口をつけ、今まで誰にも打ち明けられなかった胸の内を、お酒の力を借りて吐き出す。
十も年上の彼から見たら、私は子供っぽくてその気にならないのかもしれない。
虚しい思いを紛らわすように生ビールを飲んでいると、真紀があきれたようにため息をついた。