初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

「そんなことないよ。小夜子は美人だしスタイルも性格もいい。プロポーズしたのに手を出してこない直君が悪い」

直君が悪者になるのは不本意だけど、真紀が味方でいてくれるのはうれしい。

励ましの言葉を心強く思っていると、向かいの席で私たちのやり取りを静観していた陽太が口を開いた。

「それって、マリッジブルーじゃねえの?」

想像すらしていなかった指摘を受け、息を呑む。

そう言われると、今の私には不安になって気持ちが落ち込むというマリッジブルーの症状がピタリとあてはまる。

「なるほど。マリッジブルーね」

真紀も納得したようで、盛んにうなずいている。

なにかと気持ちが塞ぐ原因がマリッジブルーだとわかり、ホッと胸をなで下ろす。

「すみません! お代わりください」

気分よく生ビールを飲み干し、追加をオーダーした。



「じゃあ、小夜子。挨拶がんばってね」

「ありがとう」

今夜は彼氏の家に泊まるという真紀と駅の構内で別れ、ホームに続く階段を下りる。けれど、ビールの酔いが今になって回ってきたようで、足もとがおぼつかない。

「飲みすぎだな」

「……ごめん」

危なっかしい私を見兼ねた陽太に体を支えられ、ゆっくり歩を進めた。
< 108 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop