初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「そんなことないよ。小夜子は美人だしスタイルも性格もいい。プロポーズしたのに手を出してこない直君が悪い」
直君が悪者になるのは不本意だけど、真紀が味方でいてくれるのはうれしい。
励ましの言葉を心強く思っていると、向かいの席で私たちのやり取りを静観していた陽太が口を開いた。
「それって、マリッジブルーじゃねえの?」
想像すらしていなかった指摘を受け、息を呑む。
そう言われると、今の私には不安になって気持ちが落ち込むというマリッジブルーの症状がピタリとあてはまる。
「なるほど。マリッジブルーね」
真紀も納得したようで、盛んにうなずいている。
なにかと気持ちが塞ぐ原因がマリッジブルーだとわかり、ホッと胸をなで下ろす。
「すみません! お代わりください」
気分よく生ビールを飲み干し、追加をオーダーした。
「じゃあ、小夜子。挨拶がんばってね」
「ありがとう」
今夜は彼氏の家に泊まるという真紀と駅の構内で別れ、ホームに続く階段を下りる。けれど、ビールの酔いが今になって回ってきたようで、足もとがおぼつかない。
「飲みすぎだな」
「……ごめん」
危なっかしい私を見兼ねた陽太に体を支えられ、ゆっくり歩を進めた。