初恋マリッジ～エリート外交官の旦那様と極上結婚生活～

自宅に帰るとスマホを手に取り、彼の名前を表示させる。

私と陽太のいざこざに巻き込まれたうえに放置されては、いくら大人な彼でも腹立たしく思うだろう。

早く謝りたい気持ちを胸に通話ボタンをタップして、彼が呼び出しに応じるのを待った。

『今どこにいる？』

呼び出し音が鳴るとすぐに、彼の顔が画面に映る。その表情は想像していた通り険しい。

「自分の部屋」

『そうか。無事でよかった』

苛立ちを見せながらも、私を心配する様子を目のあたりにしたら、胸がチクリと痛んだ。

「ごめんなさい。それでさっきのことなんだけど……」

『聞きたいことが多すぎるから、会って話したい。明日、じっくり聞くからそのつもりでいてくれ』

「は、はい」

私の言葉を遮って話す彼の口調はきつくて、有無を言わせない迫力がある。けれど、彼を不愉快な気持ちにさせてしまったのは、私なのだから仕方ない。

『今日はもう遅い。早く寝るように。いいね？』

「はい。おやすみなさい」

『おやすみ』

会話の最後にほんの少しだけ和らいだ彼の表情に安堵して、通話を終わらせた。