初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
マレーシアの夜は熱く

午前十一時すぎに私と彼を乗せた旅客機が、(なり)()国際空港を飛び立つ。

目的地であるマレーシアのクアラルンプール国際空港に到着するのは、現地時間の午後五時すぎ。

出発する前は、七時間ほどの空の旅がこんなに苦痛なものになるとは思ってもみなかった。

「直君。昨日はごめんなさい」

座席に着き、ひと息つくと話を切り出す。けれど、彼は私とは視線を合わせずにシートモニターを操作し始める。

「その件はホテルに着いたらじっくり話そう」

「……うん。わかった」

私としては機内で話を終わらせて、清々しい気持ちでマレーシアの地に降り立ちたいと思っていたのに残念だ。

モニターで映画を鑑賞する様子は、私と話すのを拒否しているようにも見えてなんだか寂しい。

昨夜は早く寝るように言われたけれど、いろいろなことがあったせいで興奮してしまい、なかなか寝つけなかった。

話ができないのなら起きていてもしょうがない。

ブランケットを頭からかぶり、彼に背中を向けて瞼を閉じた。
< 114 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop