初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

「ううん。直君の気持ちがわかってうれしい。ありがとう」

感情を高ぶらせながら体を半回転させて彼の首に腕を絡ませ、背伸びをして形のいい唇を塞ぐ。

久しぶりに感じた温かくてやわらかな感触に満足して唇を離すと、彼が盛んにまばたきを繰り返した。

「小夜子からキスされるとは思ってもみなかった」

真面目な顔でそんなことを言われると、なんだか照れくさい。

「嫌だった?」

「まさか。でも、もう少し長くてもよかったとは思う」

本気なのか冗談なのか、よくわからない言葉をおもしろく思い、額をコツンと合わせてきた彼と一緒にクスクスと笑う。

ついさっきまでギスギスしていた雰囲気が嘘のように心を和ませていると、彼が「あっ」と短い声をあげた。

「どうしての?」

「渡したい物がある。ちょっと待っててくれ」

「うん」

私の額に短いくちづけを落とし、彼がリビングから出て行く。

仲直りできてよかったと口もとを緩ませて甘いキスの余韻に浸っていると、彼が水色のジュエリーケースを手にリビングに戻って来た。

「開けてみて」

「うん」

ソファに座って差し出されたケースを受け取り、期待に胸を膨らませて蓋を開ける。すると、ふたりで選んだエンゲージリングがリビングの照明を受けてキラリと光を放った。

正方形のジュエリーケースを見た瞬間、もしかしたらという思いが脳裏をよぎったけれど、仕上がりはお盆休み明けの八月後半だったはず。
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