初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「館内にはジムとプールとスパがあるらしい」
「えっ? そうなの?」
「ああ。それに警備員が二十四時間常駐していて、セキュリティも万全だと聞いている」
「へえ、すごいね」
高級ホテルと変わらないクオリティの高さに驚いていると、十八階でエレベーターが止まった。
中から下りて通路を進む。すると、玄関前に佇む初老の男性と女性の姿があった。
「小夜子が来るのを待ち切れなかったみたいだな」
私たちに気づくとすぐに手を振り出したご両親の様子を見て、彼が苦々しく笑う。
どうやら、来客があるとフロントから連絡がいくシステムになっているようだ。
「はじめまして。折原小夜子と申します」
「直斗がお世話になっています。遠いところお越しいただいてありがとう。さあ、中にどうぞ」
「はい。お邪魔します」
玄関前で私たちを出迎えてくれたご両親と挨拶を交わして部屋に上がる。
ラタン素材の家具と観葉植物が目を引く広いリビングは、エキゾチックな雰囲気がして素敵だし、デッキチェアと木製のテーブルが置かれたバルコニーは開放感にあふれている。
南国リゾートホテルのような住居にうっとりしていると、リビングの壁際に置かれたアップライトピアノに気づいた。
「直斗のピアノよ。今は私の物だけど」
「そうですか」
お母様の説明にうなずき、改めてピアノに視線を向ける。