初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「……直斗君と幸せにな」
「はい」
父親のしんみりとした声を聞いた瞬間、切ない気持ちが胸いっぱいに広がった。
太陽のやわらかな光が差し込む日曜日の午後のサンルームで、父親の膝の上にのって母親が奏でるピアノの音色に耳を傾けた懐かしいひとときが脳裏に浮かぶ。
私は両親にたっぷりの愛情を注がれて健やかに育ったと、改めて実感していると視界がユラユラと揺れ始めた。でも、一生に一度しかない佳き日の始まりは笑顔がいい。
込み上げてくる涙がこぼれ落ちないように無理に口角を上げたとき、大きな木製の扉が開いた。
「さあ、行くか」
「うん」
チャペル内に響き渡るパイプオルガンの厳かな音色を聞きながら、リハーサル通りに父親と歩調を合わせてバージンロードを進む。そして、両親や親族と友人たちが見守るなか、彼と永遠の愛を誓い、指輪を交換してくちづけを交わす。
すべての儀式が終わって緊張から解放された瞬間、ずっと我慢していた涙が瞳からポロポロとこぼれ落ちた。
「やっぱり小夜子は泣き虫だな」
「だって……」
感動で言葉に詰まる私を見た彼がクスッと笑い、頬に伝う涙をハンカチで優しく拭ってくれる。その左薬指には、ついさっき交換したプラチナのマリッジリングが光っている。
夫婦になった喜びを胸に彼と微笑み合い、フラワーシャワーの祝福を浴びてチャペルから退場した。