初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「叔父さん。この後の演奏、よろしくお願いします」
「ああ、任せて」
おじさまにはこの後の余興でピアノの演奏をお願いしてある。
なんて贅沢な結婚祝いなのだろうと胸を躍らせ、彼のエスコートに従って親族席から離れた。
メインテーブルに戻るとすぐに、司会者からおじさまの紹介がある。
甥のお祝いに一曲披露すると案内があると、会場のあちらこちらから、このときを待っていたと言わんばかりに大きな拍手が沸き起こった。
父親と私の仕事柄、招待客には音楽関係者が多いし、彼の音大時代の友人もいる。
世界的に有名なピアニストとして名前も顔も広く知られているおじさまに注目が集まるなか、短いスピーチの後に演奏が始まる。
この曲は、シューマンが作った歌曲をリストがピアノソロ曲に編曲した〝献呈〟で、結婚前夜にシューマンが妻となるクララに贈ったと言われている結婚式に相応しい一曲だ。
ロマンティックなこの曲が永遠に続けばいいと願いながら、繊細なタッチから奏でられる美しい音色にうっとりと耳を傾けた。