初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
麻里江さんが興奮気味に声をあげて、さらに話を続ける。
「だから直斗から音楽好きな婚約者を喜ばせたいから、披露宴で演奏してほしいと連絡があったときは驚いたわ。ずっと私たちを避けていた彼を変えた婚約者ってどんな人だろうって興味が湧いた。それなのに、つらい過去があったウィーンにひとりで行かせるなんて、あなたにはがっかりだわ」
麻里江さんがため息をつき、責めるような鋭い視線を私に向ける。
赴任先で外交官の夫を支えるのが、妻の務めだと言いたいのだろう。けれど、発表会が終わる三月末まで働くことに彼も賛成してくれた。
「ウィーンは私と主人が再会した思い出の場所です。つらい過去があったのは事実だけれど、今の彼は外交官という仕事にやりがいを感じているし、ウィーンの赴任も喜んでいました」
昔からの知り合いだからといって、ふたりで話し合って決めたことに口を挟まれたくない。
強気で言い返すと、彼女が口角を上げる。
「あなた、見た目も意外と勝ち気なところも美琴に似ているわ。直斗は今でも美琴に未練があるんじゃないかしら。だから、あなたを結婚相手に選んだんじゃない?」