初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
極上結婚生活

淡い紅色の桜が見頃を迎えた三月下旬の土曜日。日本で最後の仕事となる発表会が午前九時から始まる。

緊張する生徒を励まし、舞台袖で演奏を見守るという胃が痛くなる作業を繰り返す。そして私が受け持っている生徒たちの演奏が無事に終わると、ドレスに着替えて講師演奏の出番を待った。

彼から連絡があったのは、今から一週間前のこと。練習に集中したいから連絡しないでと言ったのは自分なのに、なんの音沙汰もないとやっぱり寂しい。

もしかしたら、勝手なことを言って一方的に通話を切った私に怒っているのかもしれない。

そう思うと、どうしようもない不安に駆られてしまう。

発表会が終わったら自分から連絡をして謝ろうと心に決め、演奏に向けて集中力を高める。しばらくの間イメージトレーニングに没頭していると、とうとう出番となった。

ロングドレスの裾を踏まないように気をつけ、舞台中央にあるグランドピアノまで移動すると頭を下げてピアノチェアに座る。

ついさっきまでは舞台袖で生徒たちを励ましていたくせに、自分の番になると間違えたらどうしようという不安な気持ちが、胸の中で大きく膨らんでいくのを止められない。
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