初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

パパなら、なにか知っているかもしれない。

コンサートチケットを手に取ると、急いで部屋を飛び出して階段を駆け下りた。

今の時刻は午後七時十分。この時間ならテレビを見て晩酌をしているはず。

廊下を進んでリビングのドアを開けると予想通り、スモークチーズをつまみにワインを飲む父親の姿があった。

「パパ! 結城のおじさまからチケットが届いたけど、なにか知っている?」

「そういえば、ウィーンのオーケストラと共演するから、小夜子をコンサートに招待したいと言っていたな」

父親に詰め寄ってチケットを見せると、呑気な言葉が返ってきた。

ウィーンのオーケストラといえば世界的に有名な管弦楽団で、チケットの入手が困難なことでも知られている。

「もう! そういう大事なことはきちんと伝えてよね!」

「ごめん、ごめん」

マイペースな父親にあきれてしまい、つい口調がきつくなってしまう。

思いがけない招待には驚いたけれど、結城のおじさまの晴れ舞台はなんとしてでも見届けたい。

おじさまの演奏を聞ける喜びに心を弾ませ、ゴールデンウィークに予約していた美容院と、母親と一緒に出かける予定をキャンセルした。
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