初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
ひとりの女性として見てもらえないもどかしさを感じつつワインを飲むと、第二部の開始を知らせるブザーが辺りに鳴り響いた。
「行こうか」
「うん」
ホールに戻る彼の後をついて行き、バルコニー席に腰を下ろす。
次はいよいよ結城のおじさまの出番だ。今はただ、音楽を楽しむことだけに集中しよう。
気持ちを切り替えて背筋を伸ばすと、オーケストラのメンバーの後に続いて指揮者と結城のおじさまが舞台に姿を現した。
これから披露されるのは、ショパンの〝ピアノ協奏曲第1番ホ短調〟。この曲はショパンが二十歳のときに作曲したもので、五年に一度、彼の故郷であるポーランドで開催される『ショパン国際ピアノコンクール』の課題曲としても有名だ。
久しぶりに、結城のおじさまの演奏を聞ける喜びに胸を高鳴らせて拍手を送った。
指揮者のタクトの動きに合わせて、演奏が始まる。
重厚で力強いオーケストラの演奏をバックに、おじさまが奏でるピアノの音色がホールに響き渡る。
鍵盤の上を舞う指は軽やかで、タッチは繊細で正確だ。
華麗で優雅なピアノの音とオーケストラの壮大な演奏の美しい調和に耳を澄まし、至福のひとときに酔いしれた。