初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
無理強いはやめてほしいと思った矢先、彼の表情がフッと緩んだ。
「一瞬、誰だかわからないくらい、綺麗になっていたから驚いた」
穏やかに微笑みながら紡がれた甘い言葉は、お世辞だとわかっていても恥ずかしい。
「あ、ありがとう」
照れくささを隠すために、慌てて視線を逸らしてシャンパンを飲んだ。
このままでは身がもたない。なにか話題を変えようと頭をひねっていると、おじさまが私たちを交互に見つめる。
「明日だけど急な打ち合わせが入ってしまって、どうしても都合がつかなくなってしまったんだ。悪いね」
誘われていたのは私だけでなかったと知って驚いていると、おじさまが彼に声をかける。
「直斗。俺の代わりに小夜子ちゃんにウィーンを案内してあげてくれないか?」
「はい。わかりました」
口を挟む余地もないまま、あっという間に話が終わってしまう。
彼が一緒なら心強いけれど、無理につき合ってもらうのは気が引ける。
「いいの?」
「もちろん」
遠慮がちに尋ねると、彼が大きくうなずく。
「ありがとう。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
おじさまと会えなくなってしまったのは残念だけど、直君と一緒に過ごせるのはうれしい。