初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

こうしてウィーン行きが決まり、五月一日の出発日を迎えたのだけれど……。

「小夜子、話があるからリビングに来てちょうだい」

「はい」

夕食を済ませて部屋でウィーンに出発する身支度を整えていると、母親に声をかけられる。

改まった様子に嫌な予感を抱きながらリビングに行くと、父親が待ちかねたように口を開いた。

「ウィーンから帰って来たら縁談の話を本格的に進めるから、そのつもりでいるように」

四月五日の誕生日を迎えた途端、両親がなぜか盛んにお見合いを勧めてくるようになった。

その都度、その気はないと断っているのに、全然あきらめてくれない。

「だから、お見合いはしないって何度も言っているでしょ」

語気を強めて言い返しても、父親はちっとも取り合わない。

「お前ももう二十七歳だろ。付き合っている男もいないようだし、一度、見合いをしてみるのもいいだろう」

彼氏がいないからお見合いするという考えには共感できないし、できれば恋愛を経て結婚したいというのが私の思いだ。
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