初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
偽装交際成立
オーストリアから帰国してゴールデンウィークが終わっても、彼とウィーンで過ごした楽しい日々が頭から離れない。
今度はいつ、直君と会えるのだろう。
旅行中にお互いのナンバーを交換したものの、誘いを断られるのが怖くて自分から連絡をする勇気が出ない。
また会おうと約束してくれたのは、別れ際に泣き出した私をなだめるためだったのかもしれない。
街路樹の若葉が目にまぶしい爽やかな季節とは対照的に、ネガティブな気分で毎日を過ごしていたとき、それは起きた。
「その後、直斗君とはどうなっているんだ?」
両親に呼び出され、リビングのソファに腰を下ろすと、父親が待ちかねたように口を開く。
ウィーンで直君と再会したと両親に話したけれど、彼に対する思いは伏せたまま。
「どうって……。どうもなっていないけど」
彼を好きになったと打ち明けるのは恥ずかしい。
素気なく返事をすると父親がため息をついた。
「なんだ、じれったいな。今度直斗君をウチに連れて来なさい」
「えっ? どうして?」
「小夜子をどう思っているのか、俺が直接聞いてやる」
余計な口出しを鬱陶しく思い、反抗するように声をあげた。
「ちょっと、やめてよ! 直君と私は昔からの知り合いで、それ以上でもそれ以下でもないんだから」