初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
父親とギクシャクしたまま迎えた土曜日。仕事を終えたその足で、地元のダイニングバーへ向かう。
自宅の最寄り駅から十分ほど歩いた場所にあるビルの一階にあるこの店は、ワインと自家製の生ハムがおいしくて、大学生のときからよく利用している。
ガラスドアを開けて中に入り、待ち合わせだと店員に伝えると、いつもと同じ半個室のテーブル席に案内された。
「おつかれ!」
「うん。おつかれさま」
仕事終わりに駆けつけた私に労いの言葉をかけてくれた真紀と挨拶を交わし、彼女の隣に腰を下ろす。
「待たせてごめんね」
「別に待ってねえし」
向かいのシート席に座る陽太に話しかけると、ぶっきらぼうな言葉が返ってきた。
ふたりは私の誕生日パーティーに毎年参加してくれていた幼なじみで、高校を卒業して違う大学に進学してからも、この店に集まっては過去の出来事やお互いの近況について話に花を咲かせている。
真紀はメガバンクに就職して、今は新宿支店の窓口係として働いている。そして陽太は大手自動車メーカーの営業マンで、販売成績は常にトップ。すでに主任に昇進しており、前に集まったときに仕事が楽しいと話していた。
「まずは赤ワインでいいな?」
「うん。ありがとう」