初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
私たちがこの店で一杯目に頼むのは、赤ワインと決まっている。
彼にオーダーを任せて、バッグから袋を取り出した。
「どうぞ。お土産です」
オーストリアのクリスタルジュエリーショップで買った、チャームキーホルダーとチョコレートのお土産をふたりに渡す。
「ありがとう。旅行は楽しかった?」
「うん。とても」
真紀の質問にうなずき、初めてのひとり旅を思い返す。
結城のおじさまの演奏は感動的だったし、シェーンブルン宮殿とシュテファン大聖堂は見応えがあった。でも今回の旅行の一番の思い出といえば、あれしかない。
「あのね、ウィーンで二十年振りに直君と会ったの!」
「直君?」
興奮気味に声をあげる私を見て、真紀が首をかしげる。
「覚えてない? 七歳の誕生日パーティーのときに……」
直君の説明をしようとしたとき、オーダーしていた赤ワインと生ハムとチーズの盛り合わせが運ばれて来た。
グラスを合わせて乾杯すると、ワインをひと口味わう。
「直君って、小夜子とピアノを弾いたヤツだろう?」
「そう! 陽太は覚えていたんだね」
「まあな」
料理を取り分けて陽太と話をしていると、真紀がポンと手を叩いた。
「ああ! ピアノがとても上手だった彼ね」
「うん。そう!」