初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

深夜に羽田空港を飛び立った旅客機が、ウィーン国際空港に予定通り着陸する。

オーストリアの公用語はドイツ語だけど、観光地では英語も通じるらしい。

幼い頃から英会話教室に通っていたから、日常生活に困らない程度には英語を話せる。それにひとり旅は初めてだけど、海外には何度か訪れたことはある。

なんとかなるでしょと、前向きな気持ちで入国審査を終えて、事前に調べた通りに電車でホテルの最寄り駅まで移動する。

午後二時を過ぎないとホテルにはチェックインはできない。キャリーケースだけ先に預けて観光に繰り出す。

身軽になったその足で向かうのは、世界遺産のシェーンブルン宮殿(きゅうでん)。ウィーンの中でも人気が高い観光スポットだ。

地下鉄でシェーンブルン駅まで移動すると、日本で購入したチケットで正門から中に入る。

石畳の広場を進み、マリア・テレジア・イエローと呼ばれる上品なクリーム色の外壁が美しい宮殿に足を踏み入れた。

舞踏会が開かれた大広間、マリー・アントワネットが幼少期に過ごしていた部屋、六歳のモーツァルトが演奏した鏡の間など、公開されている四十室をゆっくり見て回る。

きらびやかな内装と華やかな調度品の数々は、目がくらむほどどれも素晴らしい。

「ああ、眼福」

感嘆の声を小さく漏らし、非日常空間が広がる宮殿から外に出た。

広大な敷地内にはハプスブルク家の夏の離宮として建てられた宮殿以外にも、見どころがたくさんある。

手入れが行き届いた庭園を散策した後にカフェでひと息つくと、ウィーンの街並みを一望できる丘の上まで足を延ばす。

空は青く晴れ渡り、降り注ぐ太陽の日差しは目にまぶしい。

自由気ままなひとり旅もいいものだと思いながら、清々しい気持ちでウィーンの空気を胸いっぱいに吸った。
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