初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
ムキになって言い合ってしまうなんて、大人げなかった。
しゅんと肩を落として赤ワインに口をつけた。しかし、陽太の機嫌は直らない。
「俺、用事思い出したから帰るわ。これ、サンキュ」
お土産の袋を手に持ち、テーブルに五千円札を叩きつけるように置くと、半個室から出て行ってしまう。
意地を張ったせいで、飲み会が台無しになってしまうのは悲しい。
「陽太!」
彼を引き留めるために席を立つ。けれど、陽太がオーダーしていた料理を運んで来た店員と鉢合わせてしまい、慌ててシート席に座り直した。
「小夜子。放っておこう」
「でも……」
テーブルに料理が置かれるなか、真紀と隣り合わせで会話を交わす。
「大丈夫だって。あれはただの嫉妬だから」
「嫉妬?」
意味がわからず首をかしげても、真紀の話は終わらない。
「そのうち、悪かったって連絡してくるよ。今までだって、そうだったでしょ?」
小さい頃から付き合いがある私たちは、数えきれないほど衝突してきた。でも、そのたびに陽太が折れて、悪かったと連絡してくるのだ。
口は悪いけれど、陽太が一番情に厚いのを私たちは知っている。
「うん。そうだね」
彼女の言葉に納得して、陽太が座っていた席に移動した。