初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「まあな。それで俺になにか言いたいことがあるんだろう?」
「ど、どうしてわかったの?」
まるで超能力者のように私の心を読み取った彼を、信じられない思いで見つめる。
「小夜子ちゃんは、感情が顔に出やすいからな」
「そうかな」
「ああ」
私が話を切り出すのを、根気強く待ってくれていたと思うと心苦しい。
これ以上、彼を振り回してはいけない。
背筋を伸ばし、意を決して口を開いた。
「私……親にお見合いを勧められているの」
黙ったまま私の話に耳を傾けていた彼がため息をつき、体の前で両腕を組む。
つい先ほどまで穏やかに笑っていたのが嘘のような険しい表情を目のあたりにしたら、どうしようもない不安に駆られてしまう。
真紀は『お見合いなんかやめろと言われたら脈アリ。そうかと流されたら脈ナシ』って言っていたけど、無言のときはどうすればいいの?
心の中で真紀に助けを求めても、もちろんアドバイスは返ってこない。
ここは、自分でなんとかするしかない。
「だから、その……。お見合いを断るいい方法を……直君に相談したくて……」
バッグの持ち手をキュッと握り、自分を奮い立たせて話を続ける。
「ご両親は小夜子ちゃんに早く結婚してほしいと思っているのか?」
「そうみたい」