初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
二十七歳の誕生日を迎えた途端、両親が盛んにお見合いを勧めてくるようになったのを思い出し、コクリとうなずく。
「小夜子ちゃんは、結婚に対してどう思っているんだ?」
好きな人の前で、結婚観を語るのは気恥ずかしい。しかし、嘘をついたり誤魔化したりしても仕方ない。
「恋愛と結婚は別だと言う人もいるけれど、私は好きになった人と恋愛を経てから結婚したい」
いい歳をして、子供染みたことを言っていると思われたかもしれない。
いたたまれない気持ちになり、彼から視線を逸らしてうつむいた。
会話が途切れた車内は、空気が重く感じる。
ふたりで楽しい時間を過ごしていたのに、最後に雰囲気を悪くしてしまうなんて浅はかだったと後悔したとき、彼の口からとんでもない言葉が飛び出た。
「俺と付き合うか?」
「えっ?」
思いを寄せている相手に突然告白されれば、誰だって驚く。
心臓がドキドキと高鳴り始めるなか、本意を探るように視線を上げる。
「小夜子ちゃんと結婚を前提として付き合っていると俺が挨拶すれば、ご両親も見合いをあきらめるだろう」
一瞬、私との結婚を本気で考えているのかと思ったものの、そうではないとすぐに気づいた。
「つまり両親の前で、私と付き合っているフリをしてくれるのね?」
「フリというか……。まあ、そうだな」